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勝ち誇ったような声で笑う男は、清美に向かって自分はNといい、起業家として会社を持つ30歳の男であると勝手に自己紹介した。
そして、清美の「夫」であるFに相当数の商品を納品したが、支払いを滞っているために、話をしたことも告げた。
その際に、販売が計画より相当に悪く、Fの会社の返済能力では約束を果たせないことがわかった。
そこで、Nは同じ経営者として、Fを助ける代わりに、利息兼担保を決め、書面に残し、月に一度最低限の返済を行うことをFに約束させたのだとも。
「Fさんよ、さぁ、ここにあんたが書いて捺印した誓約書がある。
これに書かれているどっちかを今ここでしてもらうよ。約束の日を過ぎているからな。」
Nは自分より年上で、経営者としても先輩のFに対して、高圧的にそう言い放った。
「そんな・・・妻の前では・・・勘弁してください・・・。」
Fは弱々しい言葉で、Nにこの場での許しを乞うが、清美には何のことかわからない。
Nは、しょうがないな、と舌打ちし、連れの男に顎で何やら合図した。
連れの男は、何がどうなっているのかわからずにいる清美の背後にまわり、Fと同じように、あっという間に後手に縛り上げた。
「何をするの?やめて!ほどいて!」
清美は抗議の声をあげる。
「あなた、やめさせてよ。何とか言って。」
清美はFに対してもお願いするが、肝心の「夫」であるFは俯いたまま答えない・・・。
いったい、この人はどうしたというのだろう?清美は不審に思いながらも、何が起きているのか、皆目見当がすかないままでいる。
狐につままれたような面持ちで、何も言わないFを見ていると、今度はNが口を開いた。
「奥さん、あんたのだんなのFって男の正体ははねぇ・・・こういう男なんだよ。」
Nはそう言って、連れの男から受け取った紙を広げて、ゆっくりと読み始めた。
清美の顔が青ざめ始めるが、それはこれから始まることのほんの入り口に過ぎなかった。
続く