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清美は、出会い系で知り合ったY君と初めて逢うために四ツ谷駅にいた。
そこで客先の若者に偶然逢ったため、少々ばつが悪い気持ちの中で、Y君を待っていた。
雨が降る中、時間は刻々と待ち合わせ時間に近づいてゆく。
清美は、少々ドキドキしてきた。
やっぱり、やめてこのまま帰宅しよう・・・。そう思ったときだった。
携帯にメールが着信した。
それは、Y君からのものだった。
「四ツ谷駅に着きました。どちらですか?」
清美はすぐに返信した。
「自動販売機の脇に居ます。待っていますよ。」
しばらくして返信が来た。
「わかりました。僕も着いています。」
清美もすぐに返信した。
「どこにいるの?私がわかったら、声をかけてくれる?」
そう返信して、僅かな時間の後、清美の背後から声がした。
「清美さん?え?本当に?僕Yです。」
その声に振り向くと、先ほどの客先の新卒の青年がはにかんで立っていたのだ。
「ええっ!!そんな・・・・・どうしましょう・・・。」
清美は困惑した。
客先の、それもこれからしばらく通う客先の初日に逢った青年が偶然とはいえ、あのY君だったとは・・・。
清美は冷静さを取り戻し、Y君にこう言った。
「ま、まさか・・・お客さんだなんて・・・。どう?Y君、お茶でも飲んで話をしませんか?」と。
はにかんでいたY君は、清美の提案に首を横に振った。
そして、若さにたがわず駆け引きをするような言葉を、その口から話し始めた。
「清美さん。今、初めて逢うのだったら、お茶でもいいんですけどね。
まさか、うちの会社に指導に来てくれる先生が、出会い系で若い僕となんてことは、どっちの会社にも
言えないですよね?黙っていますから、僕の行くところについてきてくれますね?」
彼の言う意味が清美にはよくわかった。
ここで、拒めば恐らく仕事に影響が出るのは明らかだった。ここは恥を忍んで、これ一度きりということならと決断した。
「わかったわ。でも、これ一度きりにしてくださいね。約束してくれる?」
清美のその言葉にY君は頷き、こう言った。
「構いません。でも清美先生がまた逢いたいと言う場合は違いますよね?」
その言葉の意味が清美にはわからなかったが、ええと相槌を打つように答えた。
外に出てすぐにY君が手を上げてタクシーを止めた。
彼が運転手に告げたのは、ホテルではなく新宿と四ツ谷の間の小さな公園の名前だった。
清美は、意味がわからないまま無言でタクシーに乗った。
雨が二人の姿を、外から見づらくしている週末の夕方のことだった。
続く